2022年4月4日、CAFCは独立クレームの範囲は従属クレームに記載された態様を含むべきであるという原則を適用したクレーム解釈に基づく判決をしました (Littelfuse, Inc. v. Mersen USA EP Corp. (Fed. Cir. April 4, 2022))。
Littelfuse社はヒューズのエンドキャップに関する特許を有していました。Littelfuse社はMersen社がその特許を侵害しているとして,マサチューセッツ州区連邦地方裁判所に提訴しました。
特許の独立クレームは,ヒューズエンドキャップがヒューズ本体の端部を受ける第1の空洞を持つ “mounting cuff”,導体を受ける第2の空洞を持つ “terminal”,及びmounting cuffからterminal の第2の空洞まで伸びる “fastening stem” を有するものでした。明細書には,ヒューズエンドキャップの実施態様として,一つのピースから機械加工により製作されるもの,一つのピースからスタンプ加工により製作されるもの,2つの分離したピースから組み立てられるもの,の3つの実施態様が含まれていました。
その特許の審査の当初には,独立クレームにfastening stemの限定は含まれていませんでした。特許の審査中,審査官は上記の3つの態様が区別される種(species)であるとして,election of species requirement を出し,出願人は,2つの分離したピースから組み立てられるものを選択したため,機械加工により製作されること,またはスタンプ加工により製作されることを規定した従属クレームは審査からwithdrawnされて審査が行われました。最終的には,fastening stemの限定を加えることにより,独立クレームは許可され,その時に,機械加工により製作されること,またはスタンプ加工により製作されることを規定した従属クレームについてはrejoinされて特許に含まれることになりました。
地裁では,fastening stemを,mounting cuffをterminal に取り付けるstem,と解釈し,独立クレームは一つのピースからなる装置を含まない,と解釈しました。この解釈に基づき,地裁は,Mersen社の製品は,Littelfuse社の特許を侵害しない,と判断しました。Littelfuse社はCAFCに控訴しました。
CAFCは、以下の理由で、地裁のクレーム解釈を覆し、その判決をvacate かつremandしました。
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- 定義上,独立クレームは従属クレームより広いので,従属クレームが発明の特定の実施形態を規定する場合,対応する独立クレームはその実施形態もカバーしなければならない。そうでなければ,従属クレームは無意味なものとなる。このような結果をもたらすクレーム解釈は,一般的に好ましくない。したがって,従属クレームにおける単一ピース装置の記載は、独立クレームも単一ピース装置を対象としていることの説得力のある証拠となる。
- もちろん,このようなの推定は,”hard and fast rule “ではないことに留意しなくてはならない。実際、「この原則によって生じるいかなる推定も,明細書又は出願経過から導かれる反対解釈によって覆される」のである。しかし、このケースでは、Littelfuse社の解釈 (すなわち,独立クレームは単一ピースの装置をカバーしている,という解釈) は明細書によってサポートされている。
- 地裁はこの矛盾を認識しており,審査官が誤って独立クレームの許可時に従属クレームをrejoin したものである,と判断した。しかし,独立クレームはマルチピース構造に限定されておらず,従属クレームはそれぞれ,一つのピースから機械加工により製作されるもの,一つのピースからスタンプ加工により製作されるもの,2つの分離したピースから組み立てられるものを記載しているという点で首尾一貫した発明を形成しており,審査官のrejoinの判断は正しかった。
- また,確かに,詳細な説明では,マルチピース装置である「組み立てられたエンドキャップ」の実施形態に関してのみ,fastening stemに言及している。しかし,クレームされた発明を明細書中の好ましい実施形態や具体例に限定すべきではない。また,本明細書では,fastening stemは「projecting from a side of the mounting cuff 460 opposite the cavity 425(空洞425と反対側のmounting cuff 460の側面から突出する)」と記述されている。すなわち,ヒューズエンドキャップが単一ピースの材料から形成されている実施形態においても,mounting cuffの側面から突出するstemを想定することができる。
- とはいえ,地裁が,特許で使われている「fastening」と「stem」という言葉の意味に着目して,「fastening stem」という用語に意味を与えようとしたことは正しい。我々は,判決および連邦地裁のfastening stemに関連する解釈を取り消す。地裁は、独立クレームがシングルピースとマルチピースの両方の実施形態をカバーできるように、これらのクレームの用語の解釈を調整すべきであるが、地裁の解釈は、本発明の文脈およびこれらの用語の通常の意味において、「fastening」および「stem」という用語に引き続き意味を与えるものであるべきである。
この判決のように,明細書の記載,審査経過と一貫している限り,独立クレームは従属クレームの態様を含むべきものであるという原則はクレーム解釈の際の有効な判断材料になります。
by Mamoru Kakuda
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