2024年 3月6日、CAFCは”Printed Publication”の解釈を確認する判決をしています (Weber, Inc. v. Provisur Technologies, Inc. (Fed. Cir. February 8, 2024))。
Provisur社は高速スライサーに関する特許を有しており,Weber社がその特許を侵害しているとして,連邦地方裁判所に提訴し,Weber社は特許が無効であるとしてIPRの請願と特許庁に提出しました。Weber社は,Weber社のスライサーの製品マニュアルを他の証拠と組み合わせて,Provisur社の特許の無効を主張しました。
IPRにおいて,審判部はCordis Corp. v. Boston Scientific Corp., 561 F.3d 1319 (Fed. Cir. 2009) に依拠し,製品マニュアルにある「いかなる方法においても複製または譲渡することはできない」 という著作権表示,及び「ほとんどの見積もり、草案、図面、その他の文書はWeberの所有物である」と記載されたWeberの約款の知的財産権条項,に基づいて,マニュアルの受領者には守秘義務があると判断し,製品マニュアルはPrinted publicationに該当しないため,特許の自明性の判断の根拠とはできない,と判断しました。Weber社はCAFCに控訴しました。
CAFCは、以下の理由で、審判部のPrinted publicationに関するクレーム解釈を覆し、その判決を一部vacate かつremandしました。
(1) 特許法102 条の「印刷された刊行物(printed publication)」という文言は、「当該技術分野に関心のある公衆が十分にアクセスできる」文献を意味すると定義されている。In re Klopfenstein, 380 F.3d 1345, 1348 (Fed. Cir. 2004)。公衆のアクセス可能性の基準は、関連する公衆の利害関係者が合理的な勤勉さによって文献を見つけることができたかどうかである。Valve Corp. v. Ironburg Inventions Ltd., 8 F.4th 1364, 1372–73 (Fed. Cir. 2021)。
(2) 審判部は、Cordis 事件の適用を誤った。Cordis事件では、その技術は、一握りの大学および病院の同僚と、その技術の商業化に関心を持つ2つの企業にのみ配布された。CAFCは、この記録には「このような学術的規範が、情報開示が秘密保持されるという期待を生んだという明確な証拠」が含まれていると判断した。また、「これらまたは類似の営利団体が、通常そのような文書の存在を公表し、一般公開の要求に応じるであろうという」証拠もなかった。これに対して本件では,スライサーのユーザーが遭遇する可能性のある不具合への対処方法を提供するために、関心のある一般消費者に配布するために作成された。今回のように、「出版物の目的が『意図された読者との対話』である場合、その目的は公開可能性を示す」。Valve, 8 F.4th at 1374。そして,Weber社の取扱説明書は、合理的な努力によって、関心を持つ一般市民がアクセス可能であった。
(3) Weber社が著作権所有権を主張したからといって、同社がその参考文献に一般にアクセスできるようにする同社の能力が否定されるわけではない。Correge v. Murphy, 705 F.2d 1326, 1328-30 (Fed. Cir. 1983)(「所有権を主張するだけでは、実際には公開され、多数の潜在的顧客に対して販売の申し出があったものを非開示に変えることはできない」)を参照。同様に、販売に関するウェーバー社の約款の知的財産権条項も、販売完了後にウェーバー社が所有者に操作マニュアルを公的に配布することとは無関係である。
この判決からすると,マニュアルが,同僚と、その技術の商業化に関心を持つものにだけ開示され,マニュアルを一般公開の要求に応じるであろうという証拠がない場合は,情報開示が秘密保持されるという期待を生み,そのマニュアルはPrinted Publication に該当しないと判断される場合がありますが,ユーザーが遭遇する可能性のある製品不具合への対処方法を提供するために、関連消費者に配布するために作成されたマニュアルは,基本的には,Printed Publicationに該当すると考えられます。
by Mamoru Kakuda
Mamo’s extensive background includes a tenure of over 20 years as an IP professional in a renowned Japanese chemical company. During this time, he developed an elite insight into Japanese companies’ operations and IP practices. Consequently, Mamo is esteemed for his astute counsel which guides his diverse clientele on their best course of action, obtaining patents effectively and efficiently.