2020年7月22日、米国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)はIPRで提出されたsubstitute claimsに対しては、102条、103条にとどまらず、101条など特許性に関するすべての審査ができると、判示しました (Uniloc 2017 LLC v. Hulu, LLC)。
IPRの請願では、102条の新規性と103条の自明性に限った主張が可能です。今回の論点は、IPR中に提出されたsubstitute claimsに対する特許性判断も、102条、103条にに限った判断しか許されないのかどうか、という点になります。
Hulu社、Netflix社(併せてHuluという)は、Uniloc社の有する特許に対してIPRの請願を行い、2018年8月1日、特許庁審判部(PTAB)は独立項を含むクレームについて、有効ではないとの判断を下しました。その8か月間前にUniloc社はMotion to Amendを提出し、独立項が有効でないと判断された場合のsubstitute claims をenterするように要請しました。提出されたsubstitute claimsは101条のもとで、特許することができない主題であるという主張をHuluがしたのに対し、Uniloc社は、101条の問題に対して実質的な議論はせず、単にHuluは101条の議論をここで持ち出すことは許されていないと反論しました。最終結論で、PTABはUniloc社のMotion to Amendを101条に基づく特許可能な主題ではないというだけの理由で、否定しました。
関連訴訟として、テキサス州東部連邦地裁は対象特許のすべてのクレームが無効であるという判決をすでに下しており(Uniloc USA, Inc. v. Amazon.com, Inc., 243 F. Supp. 3d 797, 811 (E.D. Tex. 2017)) 、IPRの最終決定後の2018年8月9日にCAFCはその地裁判決をaffirmしました。
Uniloc社は、PTABは101条による主張ができるものと法律を誤って解釈をしているとして、rehearingを申請しましたが、PTABはこれを否定し、それを precedentialに指定しました。Uniloc社はCAFCに控訴しました。控訴審で、Huluは、substitute claims については、101条も含めた審査が可能であると主張するとともに、すべてのクレームの無効であるとの地裁判決がCAFCでaffirmされ、確定したのであるから、substitute claimsに関する争いは、現実的価値がない(mootである) 、と主張しました。
CAFCは、まず、もしUniloc社の主張が正しければ、Uniloc社に対する救済が可能になるので、本件においてsubstitute claims に関する争いは現実的価値がないわけではない、と判断しました。
また、CAFCは、IPRで提出されたsubstitute claimsに対して、102条、103条以外に基づく審査が可能であると判断しました。理由としては、(1) IPRの条文から見て、PTABはクレームの特許性を判断することを要求している、(2) 立法構造と経緯からみて、議会は、PTABによるsubstitute claimsの審理を102条、103条に限ることを意図していない (substitute claimsは特許庁による審査を受けたものでないし、101条、112条の制限のない補正を認めれば、特許の対象にならない補正や明細書にない補正をして、公知例を克服する可能性がある)、などを挙げています。
なお、O’Malley判事は、dissenting opinionの中で、‟substitute” claim は、original claims をsubstituteするものなので、original claims の無効が確定している以上、substitute claimsに関する争いには現実的価値がない、また、IPRで提出されたsubstitute claimsに対して102条、103条以外に基づく審理を認めることはefficiencyのポリシーに反する、などの理由でmajorityの意見に反対しています。
Judges: WALLACH, TARANTO, and O’MALLEY (dissent)
by Mamoru Kakuda
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