Assignor estoppelは、特許(または特許出願)の権利を譲渡した者が、後になって譲渡された特許が無効であると主張することはできない、とした衡平法のdoctrineです。
米国CAFCは、2020年4月22日、assignor estoppelは、譲渡された特許の無効を譲渡者が争うことを裁判上では禁止するが、IPRで無効を争うことは禁止していないことを確認する判決を出しています(Hologic, Inc. v. Minerva Surgical, Inc.)。
Csaba Truckai 氏は1993年にNovaCept, Inc.を共同設立し、NovaSure systemと呼ばれる医療デバイスに関する2つの特許出願をし、NovaCept社に譲渡しました。2004年、NovaCep社tはCytyc Corporation に買収され、さらに2007年にCytyc CorporationはHologic Inc.に買収されました。本件の対象となった2件の特許(’183特許と’348特許)はTruckai氏を発明者とする特許出願の継続出願であり、訴訟時点でHologic社が所有していました。Truckai氏はNovaCept社を離れ、2008年にMinerva社を設立しました。Truckai氏はMinerva社で子宮膜切離システムを開発し、販売を開始しました。
2015年、Hologic社は、Minerva社の子宮膜切離システムが’183特許と’348特許を侵害しているとして、デラウエア州連邦地裁でMinerva社を提訴しました。Minerva社は地裁で、実施可能性と記載要件不備を理由として、特許無効の抗弁をすると同時に、公知例に基づく無効を主張しIPRの請願を特許庁に提出しました。特許庁審判部は’348特許のIPR審理はinstituteしませんでしたが、’183特許のIPR審理はinstituteし、’183特許は無効であるとの決定をし、その決定は2018年にCAFCで維持されました。一方で地裁は、assignor estoppel により、Minerva社の地裁における特許無効の抗弁は禁止されると判断し、’348特許に基づく賠償を認めるとともに、’183特許に関するCAFCによってIPRの無効の決定が維持されたので、’183特許にもとづく賠償は認められないと判断しました。Minerva社、Hologic社双方がCAFCに控訴しました。
CAFCではassignor estoppelは、譲渡された特許の無効を譲渡者が争うことを裁判上では禁止していると判断する一方で、Arista Networks, Inc. v, Cisco Sys., Inc., 908 F.3d 792, 804 (Fed. Cir. 2018) に基づき、IPRで無効を争うことは禁止していないことを確認しました。
興味深いことに、CAFCのStoll 判事は、このような地裁とIPRでのassignor estoppelの扱いの違いは、奇妙な状況を生んでいるとして、en bancでの審理を考慮すべきであるとのadditional viewsを判決に添付しています。
by Mamoru Kakuda
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