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November 18, 2020by Mamoru Kakuda

2020年11月9日、米国CAFCは、analogous artの判断において、引例がクレームされた発明の特定の課題と合理的な関連性があるかどうかの判断基準について言及した判決をしています (Donner Technology, LLC v. Pro Stage Gear, LLC (Fed. Cir. Nov. 9, 2020))。

Pro Stage Gear社は、ギターのエフェクターのペダルを取りつけるペダルボードに関する特許を所有していました。Donner 社は、IPRの請願を提出し、この特許に対して、公知例から自明であり、特許性がないと主張しました。根拠となる公知例には、電気リレーに関する発明(Mullen) が含まれており、Donner社は、MullenにはPro Stage Gear 社の特許に類似した構造が記載されていると主張しました。しかし、特許庁審判部は、Mullenがanalogous artであることをDonner社は証明していないので、Pro Stage Gear社の特許の特許性は否定されないと判断しました。Donner 社はCAFCに控訴しました。

引例がAnalogous artであるためには、引例が、クレームされた発明と同じ尽力分野(same field of endeavor)であるか、もしくは、クレームされた発明の特定の課題と合理的な関連性(reasonably pertinent)があるか、のどちらかであることが必要です。本件では、Mullenがクレームされた発明と同じ尽力分野ではないことについては両社の争いはありませんでした。そのうえで、CAFCは、以下の理由で、Mullenがクレームされた発明の特定の課題と合理的な関連性を持っているかどうかのPTABの判断が不十分であったと判断し、事件を特許庁に差し戻しました。

    1. Donner社は専門家の証言を提出して、Mullenがanalogous artであることを説明しているが、それについて、特許庁審判部は考慮したという証拠がない。
    2. 引例がクレームされた発明とanalogous artであるかどうかを判断するには、当業者の観点(特に、クレームされた発明の分野の当業者がその尽力分野外の引例を考慮するという観点)で、両者が関連する課題を特定し、比較しなければならないが、特許庁審判部はそれを行っていない。
    3. 特許庁審判部はクレームされた発明とMullenとの差異を多く特定しているが、たとえ、有意な差異が両者にあったとしても、analogous artであるということはあり得る。審判部は、なぜ、その差異によって、クレームされた発明と同様の課題を解決するためにMullenの記載が用いられないといえるのかを説明していない。
    4. 審判部は、この発明の分野の当業者のレベルが比較的低く、Mullenの技術を十分に理解できないと、認定しているが、それだけでは、analogous artでないという結論に至るのには不十分である。当業者は、Mullenの中の関連する課題の解決の部分だけ理解できれば十分である。
    5. 審判部は、Mullenは非常に古い文献なので、当業者は参照しないだろうとも認定しているが、その理由を十分に説明していない。

以上のように、引例がクレームされた発明の特定の課題と合理的な関連性を持っているかどうかは、その尽力分野外の引例を考慮する当業者の観点で、クレームされた発明と引例とが関連する課題を特定し、比較することが重要であり、引例とクレームされた発明の差異、当業者のレベル、引例の古さなどだけに基づいた判断では、十分ではありません。

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by Mamoru Kakuda

Mamo’s extensive background includes a tenure of over 20 years as an IP professional in a renowned Japanese chemical company. During this time, he developed an elite insight into Japanese companies’ operations and IP practices. Consequently, Mamo is esteemed for his astute counsel which guides his diverse clientele on their best course of action, obtaining patents effectively and efficiently.