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September 24, 2020by Mamoru Kakuda

2020年8月28日にAIAの下での発明者変更が認められる条件について言及した米国CAFCの判決が出ています (Egenera, Inc. v. Cisco Sys., Inc., (Fed. Cir. Aug. 28, 2020))。

Egenera社は、バーチャルネットワークを自動的に展開するプラットホームに関する特許を持っており、その特許に侵害するとしてCisco社をマサチューセッツ州連邦地方裁判所に提訴しました。Cisco社はその特許に対してIPRの請願をしました。IPRの手続き中地裁でのクレーム解釈の前に、Egenera社は、特許庁に、発明者の一人を削除する請願をしました。Egenera社の発明者削除の目的は引例の一つ(Grosner)よりも早い発明日を主張するためであることは明らかでした(削除を申請された発明者はEgenera社の主張する発明日よりも後に入社していました)。審判部は、Grosnerを引例として考慮したとしても、Cisco社は十分に無効を証明できていないとして、IPRをinstituteしませんでした。その直後、特許庁は発明者の削除を許可しました。

Cisco社は地裁でのクレーム解釈においてクレーム中の‟logic to modify”という語が、means plus functionであると主張しました。Cisco社は、このような主張をIPRでは行わず、地裁で初めて行いました。地裁は、この主張を認めました。その後、Cisco社は、このクレーム解釈に基づくと、以前に削除された発明者は本特許の発明者に含まれるべきであり、pre-AIAの特許法 102条(f)により、特許は無効であると主張しました。地裁は bench trialの結果、削除された発明者は今回のクレーム解釈の基づくと発明者であるべきだが、 judicial estoppelにより、Egenera社は発明者の修正はできず、したがって、特許は無効であると判断しました。Egenera社はCAFCに控訴しました。

CAFCで、Egenera社はクレーム解釈と、judicial Estoppelの適用について争いましたが、クレーム解釈については、CAFCは地裁の判断に誤りはないと判断しました。

しかしながら、CAFCはjudicial estoppelの適用については、Egenera社の主張を認めました。

CAFCはまず、以下の理由で、judicial estoppelがないとした場合に発明者の修正は可能であると判断しました。

    1. AIAでの特許法256条(a)は、もし修正が可能であれば、発明者の表示の‟error” によって特許は無効になることはない、と規定している。
    2. 地裁では、Egenera社はIPRで一旦削除した発明者を戻そうとしているので、発明者の削除はerrorとは言えない、と判断した。Cisco社はこれに同意して、Egenera社の以前の発明者変更の請願は発明者を正しくする(しかし誤っていた)努力ではなく、戦術的な欺瞞であると主張した。しかしながら、先例によれば、errorという語は、それが正直であれ不正直であれ、すべての誤りを含むものである。
    3. 欺瞞の意図がある場合は、inequitable conductのルールで判断されるべきである。地裁はCisco社の主張にもかかわらず、この発明者の変更はinequitable conductであるとは認定しなかった。
    4. Cisco社は、pre-AIAでの特許法256条では、deceptive intentのない場合にだけ発明者の修正が許されていたことを考慮すると、議会は、 AIAでの特許法256条(a)における ‟error” から ‟intentional accuracy” によるerrorを除くことを意図している、と主張している。しかし、条文のプレーンな意味からみて、この主張は採用できない。
    5. Egenera社が発明者を削除した際、誰も‟logic to modify” がmeans plus functionであるとは主張しなかった。したがって、Egenera社の行った発明者の削除は256条(a)の‟error” に該当する。

次に、CAFCはEgenera社の発明者削除にjudicial estoppelは適用されない、と判断しました。まず、judicial estoppelが適用されるかどうかの判断要素は以下のとおりである、としました。

    1. その当事者の当初の立場と後の立場とに明らかに一貫性がなく、当初の立場と後の立場とが互いに排他的であるか?
    2. その当時者の当初の立場を裁判所が受け入れることにその当事者が成功したか?
    3. もし、judicial estoppelが適用されないと、その当事者が unfairな利益を得るか、または他者がunfairな被害を受けるか?

まず、(a)については、地裁でのクレーム解釈によって、発明者であるかどうかは変わるので、Egenera社の立場に一貫性がないとは言えない、と判断しました。

次に(b)については、特許庁は、発明者の変更について実体的な審査をするわけではないので、Egenera社の立場を受け入れたとは言えない(ただし、特許庁での行為がjudicial estoppelを生じさせないとまでは言っていない)、と判断しました。

最後に(c)について、発明者の削除によって、Grosnerよりも早い発明日を主張することに成功したわけではない(引例であるかどうかにかかわらず、IPRはinstituteされなかった)ので、Egenera社はunfairな利益を受けたわけではない、と判断しました。

AIAにおいて、それが正直であれ不正直であれ、errorの修正であれば発明者の変更は認められること、および、発明者の変更に欺く意図がある場合はinequitable conductの適用で処理すべきこと、を明らかにした点で、この判決は注目に値すると思います。

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by Mamoru Kakuda

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