米国CAFCが第三者のsecret commercial use はpre-AIA102条(a)の“known or used”や102条(b)のpublic use には該当しないとの判決を4/8に出しています(BASF Corp. v. SNF Holding Co. (Fed. Cir. 2020)) 。
BASF Corporation (BASF)は高分子量ポリマーの製法に関する特許のクレームを侵害しているとして、SNF holding Company等 (SNF)をテキサス州南部地区連邦地裁に提訴しました。SNFは日本の三洋化成社のプロセスをもとに、この特許の各クレームは無効であるとのsummary judgement を求めました。三洋化成社はこのプロセスを米国Celanese社に1985年にライセンスし、Celaneseに技術情報を提供するとともに、立ち上げのために技術者をCelanese社の工場に派遣し、三洋化成社と同じパフォーマンスを得られることを保証していました。Celanese社は10年間の秘密保持義務を負い、秘密保持義務を負う従業員かsubcontractorにだけ、情報を開示することが許されていました。ライセンスは1995年に、秘密保持契約は1997年に終了しました。
地裁では、summary judgementによりSNFの主張を認め、 “one person’s use or knowledge”が102条(a)のに“known or used” by others の条件に必要なものであり、使用が秘密であるかどうかは関係がない、また、Celaneseへのライセンスと情報提供が102条のpublic use およびon saleに該当すると認定しました。
CAFCでは地裁判決を棄却し、本件を地裁に差し戻しました。
102条(a)に関しては、“[p]rior knowledge and use by a single person is sufficient.”という点ではSNFは正しいものの、合理的なinquiryの後にaccessible to publicではないknowledge やuseは公衆の利益にならないので、102条(a)の条件に合致しない、と判示し、重要な事実に関する真正な争点(genuine issues of material fact) が存在すると判断しました。
102条(b)のpublic useに関しては、SNFはElectric Storage Battery Co. v. Shimadzu, 307 U.S. 5, 20 (1939) (商業目的の工場内の通常の使用はpublic useに該当する)に基づくとともに、第三者のaccessibilityにかかわらず、secret commercial useはpublic useになると主張しました。CAFCはShimadzuでは、意図的に隠されていないものについて、通常の使用がpublic useに該当しているとしているだけであるので、重要な事実に関する真正な争点が存在すると判断しました。また、SNFの「第三者のaccessibilityにかかわらず、secret commercial useはpublic useになる」との主張については、Metallizing Eng’g Co. v. Kenyon Bearing & Auto Parts Co., 153 F.2d 516 (2d Cir. 1946)で、public use が認定されたのは、発明者本人のsecret commercial useについてであり、特許法は、「自分の知識を公にシェアする後の発明者を自分の発明を秘匿する先の発明者よりも優遇する」として、単純に誤りである、としました。
102条(b)の on saleについては、CAFCは、三洋化成社の米国Celanese社に対するライセンスや、その後のヘキスト社によるCelanese社の合併はこの事件の場合、on saleに相当しない、と判断しています。
by Mamoru Kakuda
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