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August 12, 2020by Mamoru Kakuda

2020年7月14日に、ノーベル賞受賞者である本庶佑先生が発明者である6件の米国特許について、出願以前に共同研究をしていた、Dr. FreemanとDr. Woodが共同発明者になるべきかどうかについて判断したCAFC判決(Dana-Farber Cancer Institute, Inc. v. Ono Pharmaceutical (Fed. Circ., 2020) が出ています。

Dana-Farber社は、Dr. FreemanとDr. Woodが共同発明者になるべきであるとしてマサチューセッツ州連邦地裁に、特許権者である小野製薬工業株式会社を提訴しました。連邦地裁は、最終的にDr. FreemanとDr. Woodのいくつかの発見とDr. Freemanの実験とがすべての特許の着想にとってsignificantな貢献をしているため、2人は共同発明者となるべきであると判断しました。小野製薬社はCAFCに控訴しました。

CAFCでの小野製薬社の主な主張は以下の通りです。

  1. FreemanとDr. Woodの貢献はクレームされた主題とは関係がない。すなわち、本発明の着想は本庶博士らのディスカッションと実験によって、Dr. FreemanとDr. Woodの研究とは独立して得られたものである。Dr. Freeman及びDr. Woodとの以前の仕事は推論的なものに過ぎず、本発明の着想に至った実験にDr. FreemanとDr. Woodは参加してない。また、Dr. FreemanとDr. Woodの出した以前の特許から見ても本件の特許は特許性があると判断されている。
  2. FreemanとDr. Woodの貢献は、本庶氏との共著の形で、着想前にすでに公知であった。研究が着想前に公知のものである場合は、significantの貢献にはなり得ない。
  3. FreemanとDr. Woodの貢献が、発明の完成にsignificantであるという地裁の事実認定自体が誤りである。

CAFCは小野製薬社の主張を以下の理由で退けました。

  1. 共同発明者であるためには、(a) 何らかのsignificantな方法で発明の着想 (conception)または実施化 (reduction to practice)に貢献していること、(b) 発明全体に対して質的にinsignificantでない程度に、クレームされた発明に貢献していること、および、(c)よく知られた(well-known)概念や現状の技術の単なる説明を超えた貢献をしていること、が必要である。物理的にまたは同じ時期に協働する必要はない。また、着想を完成させるために、意図する目的に対して発明が機能するかどうかを確かめる必要はない。さらに、 FreemanとDr. Woodの出した以前の特許に対して新規性、進歩性があることは共同発明者であるかどうかの判断とは関係がない。
  2. 着想前公知であった研究がsignificantな貢献をすることはないという主張は、特に複雑な発明の場合は、協働の現実を無視するものである。本件では、着想の前に FreemanとDr. Woodと約1年間協働し、Dr. FreemanとDr. Woodの研究が公知になったのは、着想の数週間前である。このような状況下では、その研究が着想の前に公知になったとしても、協働による貢献が否定されることはない。
  3. 本庶博士が特許された方法の着想を得るために FreemanとDr. Woodの研究結果が必要であったことについて、小野製薬社の専門家証人は争わなかった。したがって、地裁の判断に誤りがあるとは言えない。

本判決は、共同発明者であるかどうかの判断の一つの指針になると思われます。特に、その研究が着想の前に公知になったとしても、その協働による貢献が否定されない場合があることを判示した点で注目されます。

Judges: Lourie, Newman, and Stoll

by Mamoru Kakuda

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