2020年4月9日、CAFCは、機能性クレームについて、実際の侵害の時点でその侵害の有無を判断できれば不明瞭とはいえない、と判示しました (Nervo Corp. v. Boston Scientific Corp. (Fed. Cir. 2020))。
Nervo社は、脊髄刺激療法における知覚異常を低減またはなくすための方法、装置について複数の特許を有しており、これらの特許を侵害するとして、Boston Scientific 社をカリフォルニア州北部連邦地裁に提訴しました。
地裁は、クレーム解釈とサマリージャッジメントのorderにおいて、これらの特許のうち、一部のクレームについては不明瞭であるため無効であると判断し、他のクレームについては有効であるが非侵害であると判断しました。両社はCAFCに控訴しました。
論点の一つは、 “paresthesia-free” (“non-paresthesia-producing” などの類似表現を含む)という、機能的表現が不明瞭であるかどうかでした。
地裁では、「知覚異常を生じる信号を生み出すパラメータは患者ごとに異なるが、患者が特定されれれば、その信号が知覚異常を生じるかどうかは直ちに決定できる」として、方法クレームに関しては、不明瞭でないと判断していました。一方、装置、デバイスクレームについて、地裁は、「クレームを侵害するかどうかは、患者に対するシステムの影響によるのであり、システムやデバイスのパラメータ自体によるのではない」として、不明瞭であり無効であると判断していました。
控訴審では、Boston Scientific社は、Halliburton Energy Servs., Inc. v. M-I LLC, 514 F.3d 1244, 1255 (Fed. Cir. 2008) 及び Geneva Pharm., Inc. v. Glax-oSmithKline PLC, 349 F.3d 1373, 1384 (Fed. Cir. 2003) を引用して、クレームは、デバイスを使用、または方法を実施した後でなければ、侵害の有無を判断できないのであるから、不明瞭であると主張しました。
これに対して、CAFCは、以下のような理由で、方法のクレームだけでなく、装置、デバイスのクレームについても不明瞭ではなく、無効ではないと判断しました。
まず、CAFCは、純粋な機能クレームの明瞭性は、クレーム範囲を当業者が決定できる程度に一般的なガイドラインや実施例が明細書に十分に記載されているかどうかによる、とした上で、この特許は、システムの詳細なガイダンスと実施例が明細書に記載されているので、クレーム発明の範囲を合理的な確実性をもって決めることができる、判断しました。
デバイスを使用、または方法を実施した後でなければ侵害の有無を判断できないクレームは不明瞭であるというBoston Scientific社の主張に対しては、CAFCは、クレームが明瞭であるためには、潜在的な侵害者が、特定の行為がクレームを侵害するかどうかについて予想に基づいて決定できることを必要としない、と判示しました。特に、以下の理由で、本件は、Halliburton および Genevaとは矛盾しないと説明しています。(1) Halliburtonで “fragile gel” が不明瞭と判断したのは、侵害の有無を判断できる時点がないからである、 (2) Genevaで判示されたのは、同じ投与量であっても異なる状況では相乗効果(synergy) が得られないという事実だけでは “synergistically effective amount”という語が不明瞭であるとはいえない、ということである。
Judges: MOORE, TARANTO, and CHEN
by Mamoru Kakuda
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