2020年3月26日、米国CAFCは、審査での主張と矛盾するクレーム解釈は採用されないと判断する判決 (Genentech, Inc. v. Iancu (Fed. Cir. 2020)) をしました。
Genentech社は、特定の抗体とタキソイドとの組み合せを投与する癌患者の処置方法に関する2件の特許 (’441特許、’549特許)の特許を所有しており、これらの特許の特許性がIPRで争われました。IPRでのひとつの争点は、2件の特許のクレームに含まれる「(人間の患者の病気の進行に要する時間を延ばすための)有効量」という語が、何と比較して判断されるものであるか、という点でした。IPRで特許庁審判部は、これは処置をされていない患者と比較するものと解釈し、この解釈に基づいて、2件の特許は特許性がないと判断しました。Genentech社はCAFCに控訴しました。
CAFCで、Genentech社は、明細書に沿って、クレームの有効量は、タキソイド単体を投与した患者と比較して判断されるものと解釈すべきであると、主張しました。CAFCは以下の理由でこの解釈を認めませんでした。
-
- 明細書では、問題の用語を明示的には定義していない。
- ’441特許の審査過程で、審査官が、クレーム中の有効量の比較対象が、未処置の患者とも、タキソイドだけを投与した患者とも、また、特定の抗体等だけを投与した患者とも考えられ、不明瞭であるとして、拒絶理由を発したのに対し、Genentech社は、有効量の比較対象は、未処置の患者と比較する意味であることが明細書から明らかであると、応答している。つまり、Genentechは、他の解釈の可能性を拒絶し、比較対象を未処置の患者とするという解釈を明示的に選択している。
- ’441特許での審査過程でのGenentech社のステートメントは、明細書を共通にする関連出願である’549特許の解釈にも適用される。
112条の不明瞭の拒絶に対応する場合であっても、クレームの用語の定義について、回答書で触れる場合には、慎重にすべきであると思います。
by Mamoru Kakuda
Mamo’s extensive background includes a tenure of over 20 years as an IP professional in a renowned Japanese chemical company. During this time, he developed an elite insight into Japanese companies’ operations and IP practices. Consequently, Mamo is esteemed for his astute counsel which guides his diverse clientele on their best course of action, obtaining patents effectively and efficiently.