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May 24, 2022by Mamoru Kakuda

2022年4月29日,CAFCは,基準日前の取引は実験的使用であってオンセールバーは適用されない,という特許権者の主張を認めない判決をしました (Sunoco Partners Marketing  v. U.S. Venture, Inc. (Fed. Cir., 2022 ))。

Sunoco社はガソリンへのブタンの混合システムに関する4件の特許をVenture社が侵害しているとして,イリノイ州北部地区連邦裁判所に提訴しました。

Venture社は基準日(特許出願の1年前の日)の2日前に発明者の会社であるMCE Blending(「MCE」)社が,Equilon Enterprise LLC(「Equilon」)社に自動ブタン混合システムを販売し,デトロイトのEquilon社のターミナルに設置することを申し出ていたため,特許はオンセールバーにより無効であると主張しました。これに対し,Sunoco社はこの取引は商業的な販売ではなく,実験的使用(experimental use)であり,オンセールバーの適用はない,と主張しました。

オンセールバーが適用されることを証明するには,特許発明が,基準日以前に,(1)「商業的な販売申し出の対象」であり,(2)「特許化の準備ができている」ことを示す必要があります (Helsinn Healthcare S.A. v. Teva Pharms. USA, Inc., 139 S. Ct. 628, 630 (2019) (quoted Pfaff v. Wells Elecs, Inc., 525 U.S. at 67))。一方で,実験的使用の法理によると,特許権者は,取引が主に実験の目的で行われたことを証明することで,オンセールバーを否定することができます。最高裁の古い判決 (City of Elizabeth v. Am. Nicholson Pavement Co. Nicholson Pavement Co., 97 U.S. 126, 137 (1877)) にあるように,発明者は,自分の発明を完成させるため,あるいはそれが意図した目的に適うかどうかを確かめるための善意の努力に従事するために,特許取得を遅らせることができます。

連邦地裁は,装置が主に実験のために取引されたという十分な証拠があるので,Pfaffの第1の原則は満たされず,したがって,Pfaffの第2の原則を検討する必要はないと判断しました。これに基づき,連邦地裁は特許の無効性を否定し,Venture社がSunoco社特許を侵害するとの判決を下しました。Venture社はCAFCに控訴しました。

CAFCは,以下の理由で,連邦地裁のオンセールバーの関する判断を覆し,その侵害の判決を取り消して,地裁に差し戻しました。

    1. Equilon社の取引が主に実験目的であったか,または商業的な目的であったかは,「周囲の状況の全体像」に基づいて分析されるべき法律問題である。そこで,まずEquilon社の契約書を分析すると,以下の点が認められる。
      1. 実験的な目的に言及することなく,取引が販売であると明示的に記述されている。
      2. 「対価」として,ブタンの「購入」を明記している。
      3. この契約には「所有権の移転を伴わない」ことは示唆されておらず,むしろ所有権の移転を想定している。すなわち,MCE社のシステムの所有権は,契約に添付された売却証書によりEquilon社に譲渡されることになる。
      4. Sunoco社は,契約書に”Equipment Testing “と題されたセクションがあり,設置前のテストと設置後のテストが記述されていることを主張の根拠にしている。しかし,設置前テストは,契約の前に契約なしでも可能であった。また,設置後テストは,受入試験に相当するものである。
    2. Sunoco社は取引の意図が実験的であったという発明者の証言にも依拠しているが,連邦地裁も認定しているように,発明者の主観的な意図は重要ではなく,契約という「客観的証拠」に重きを置くべきである。
    3. CAFCは,以前に,公共の場での使用または販売が「主に実験的であり,商業的ではない」かどうかの判断に関連する客観的要因のリストを以下のように提示している。(1)公開実験の必要性,(2)発明者が保持する実験に対する支配力,(3)発明の性質,(4)試験期間の長さ,(5)支払いの有無,(6)守秘義務の有無,(7)実験記録の保持,(8)実験を行ったのは誰か,(9)実験中の商業利用の程度,(10)実際の使用条件下での評価を合理的に必要とする発明かどうか,(11)試験が組織的に行われていたかどうか,(12)試験中に発明者が継続的に監視していたかどうか,(13)潜在顧客との接触の性質,である。ただし,このリストは完全なものではなく,すべての要素が特定のケースに適用されるとは限らない。
    4. 本件では,特に上述の契約条項を考慮すると,実験的な目的を示す客観的証拠の記録がほとんどない。
    5. したがって,CAFCは連邦地裁の実験目的使用に関する決定を覆し (reverse),それに基づく侵害の判決を取り消し (vacate),さらに,Pfaffの第2の要素を検討するために,本件を連邦地裁に差し戻す。

この判決のように,実験目的の使用を主張してオンセールバーを否定しようとするときは,客観的で,かつ全体としての根拠に裏付けられている必要があるといえます。

by Mamoru Kakuda

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